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入稿データの作り方。下地白印刷用のパスの作り方

※Adobe Illustrator27.3.を前提として説明しています。

※標準コースでは、下地の白印刷用データを弊社が作成しますので、本作業は不要です。

※メタリックシルバーを下地に使う場合は、-0.1mmのオフセットが必要です。

 

文章内での「オフセット」とは印刷方式の「オフセット印刷」のことではなく、文字通りの「オフセット」で基準点からの距離を指しています。

本文章では、Adobe Illustratorの、パス→パスのオフセットという機能を使って、印刷したい柄より一回り小さな柄のパスを作るための流れを説明します。

オブジェクトと効果の「オフセット」の違い

Adobe Illustratorには2種類の「パスのオフセット」が用意されています。画面上のメニューバーから選択します。

  1. オブジェクト > パス > パスのオフセット
  2. 効果 > パス > パスのオフセット

オフセットに関するポイントで混乱しやすいのは、2種類の方法があることです。

 

1つ目は、「オブジェクトのオフセット」で、パスが複製されて2個作られ、片方が設定値でオフセットされる方法です。

もう1つは「効果のオフセット」で、パス本体が設定値でオフセットされる方法です。

 

これらの2つの方法で作られたものは最終的には同じですが「オフジェクトのオフセット」の場合、元のパスが残ってしまうため、生成された新しいパスを下地のレイヤーに移動する必要があります。

 

一方、「効果のオフセット」では、見た目上のみオフセットされるため、パスとして使用するには「アピアランスを分割」する必要があります。

 

初めのうちは混乱することもあるかもしれませんが、慣れればどちらの方法もスムーズに操作できます。オススメするのは「効果のオフセット」です。

※アピアランスは外観の意味。Adobe Illustratorでは、「効果」の機能を使うと「アピアランス」パネルにその「効果」が登録されます。アピランスパネルの「fx」を押すことでも「効果」を追加できます。

角の形状はラウンドに

目的はより多くの面積の下地を入れるためです。

「パスのオフセット」メニューの初期設定では、角の形状は「マイター」になっています。しかし、より多くの面S系の下地を入れるためには、角の形状を「ラウンド」に変更することをオススメします。

大きな柄の場合は、角の形状がどちらでもあまり違いがありませんが、凹んだ鋭角部においては角の形状によって違いが出ます。

実際の工程 「効果のオフセット」を利用

※標準コースでは弊社で作業しますので、本作業は不要です。

・カラーレイヤー

・下地白印刷レイヤー

・台紙レイヤー

を予め作っておきます。※配布しているテンプレートファイルに準拠しています


①カラーレイヤーに描画したら、白を下地に入れたいオブジェクト(Illustratorでパス、文字などを指す総称)を下地用白印刷レイヤーに複製します。書体はKSW新豪龍を使用し、アウトライン化したあとに少し太らせました。


②複製した後に色を白に変更して、見やすいように下地用白印刷レイヤーをカラーレイヤーの上のレイヤーに移動しました。カラーレイヤーは非表示にしています。


③オブジェクトを選択して、効果>パス>パスのオフセットを選択


④デフォルトだと上のように突起が飛び出しますが、正常です。


⑤パスのオフセット値を設定するパネルが表示されます。

  • オフセットの値を-0.05mmに設定
  • 角の形状をマイターからラウンドに変更します
  • 角の比率は4のままでOKをボタンをクリックします。

なお、角の比率の数値調整が必要な場合もありますが、内側に縮める場合は問題が出ることが少ないので、そのまま省略しても問題ありません。


ラウンド or マイター

ラウンドが基本。マイターの場合、鋭角すぎる部分で下地がはみ出してしまうことがあります。


⑥OKを押した後が上の画面です。OKを押した後は、出力されたパスに問題がないか注意深く確認しましょう。問題がなければ、「アピアランスを分割」(後述の⑧)を行うことで、実際のオブジェクトデータに変換することができます。

⑦-1 下地が入れられなかった箇所のチェックです。

使用している柄によっては、毛筆体のため小さな欠片が生じることがあります。中央のオブジェクトは、内側に白が入らないほど非常に小さな箇所です。白っぽい下地に貼る場合はこのまま残す選択肢もありますが、本作業では取り除きました。

 

また、下地のオブジェクトが作られていない場合もあり、その場合は下地が赤と同じサイズで作成されてしまうことがあります。そのため、目視で全体をチェックすることが必要です。

⑦-2 ほかにも下地がつけられない箇所があったので取り除きました。


使用している書体によっては、想定外の細いサイズが出ることがありますが、通常はオフセット値を元に、柄(オブジェクト)を描画することができます。

つまり印刷業者の指定オフセット値で印刷可能な最小サイズが決まります。

下地が必要な場合、最小サイズは0.20mm角です。下地が不要な場合、最小サイズは0.05mm角です。

 

また、パスが閉じていない箇所(オープンパス)はオフセットの効果が反映されませんので工程を戻って修正する必要があります。パスのオフセットの効果は、閉じているバスにのみ適用されます。


⑧-1 「効果」で作られた見た目上のパスを実際のパスに変換するため、下地用に作ったオブジェクトを選択した状態でウインドウ>アピアランスを表示します。

⑧-2 アピアランスパネルを表示させると、効果で使用した「パスのオフセット」の項目が表示されます。左側の目マークを押すとオフセットのオンオフが表示でき、適用前適用後を見ることができます。

⑧-3 オブジェクト>アピアランスを分割を選択します。これでアピアランスにある「効果」が反映されて実線のパスになりました。


⑨-1 うまくできていれば上のようにカラーレイヤーより少し小さな下地オブジェクトができています。

⑨-2 確認をするには、表示>アウトラインを選び、アウトライン表示にします。

⑨-3 パスが2本表示されました。この表示でパスが1本に見える場合は、カラーレイヤーか下地のレイヤーのどちらかが非表示になっているか、アピアランスの分割を忘れている可能性があります。

実際に印刷したデカールがこちらです。目視ではあまり違いがないように見えますが、

周囲から下地の白が見えてしまっています。

白のインクは膨張しやすいのと(弊社の場合)、印刷のズレの緩和のため、また、仮に同じ位置に印刷されたとしても色が層で形成されるため、横から見たときに下地が見えないようにするためです。

 

印刷技術の言葉で「見当ずれ」や「版ズレ」と言われる不具合です。完全には防ぐことができないため、ずれを考慮して内側にオフセットして、ずれを緩和します。

 

アピアランスの機能を活用してパスの可逆な連動修正ができる方法もありますが、混乱しやすい工程があるのでまた改めて紹介いたします。

※Adobe Illustrator27.3.を前提として説明しています。

※標準コースでは、下地の白印刷用データを弊社が作成しますので、本作業は不要です。

※メタリックシルバーを下地に使う場合は、-0.1mmのオフセットが必要です。

株式会社ハイキューパーツの運営する模型用水転写式デカールの印刷サービス。小ロットかつ高精細を両立した新式印刷デカールです。

株式会社ハイキューパーツは、模型用品の開発・販売を専門とするメーカーです。2007年からデカール印刷の新しい方法の研究を始め、2013年には独自のデカール印刷製法を確立しました。また、2014年には箔転写印刷を高精密で小ロットで印刷するCF印刷式を開発して、2018年より受注印刷業務を開始しました。小ロットであっても品質を落とさず、個人でも手頃な価格で高精細デカール印刷サービスを提供することを目指しています。


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